博打好きで機転の利く男・太郎が主役の「テングの羽うちわ」は、笑いと驚き、そして人情が詰まった日本昔話です。天狗との勝負や奇妙な交換劇を通して、伝統のユーモアと不思議な力が描かれています。本記事では、太郎の勇気と奇抜な発想、そして天狗の不思議な道具に焦点を当て、その魅力を余すところなくご紹介します。
テングの羽うちわ
昔、とある村に博打好きで機転に長けた男・太郎が住んでいました。太郎はサイコロに目がなく、何か面白いものがあれば即座に試してみる性分でした。そんな太郎は、天狗が住むと噂されるテング山へ向かうことにしました。大きなサイコロを手に、山頂で転がしながら「5だ! 4だ! 2だ!」と一人で大声で遊んでいたのです。
その声に応えるかのように、空から天狗が現れ、「太郎、お前のサイコロ、俺にも貸してくれ」と要求します。しかし太郎は、そんな面白いものを簡単に譲るわけがないと笑いながら断ります。これに不機嫌な天狗は、「俺は天狗だぞ。お前よりももっとすごい物を持っている」と挑発し、太郎に勝負を持ちかけました。「なら、サイコロで勝負だ。勝ったらこのサイコロを渡せ、負けたら俺の羽うちわと交換しよう」と。結局、博打に強い太郎に天狗は何度も敗れ、やがて天狗は太郎のサイコロに執着し、自分の誇りの羽うちわとの交換を提案してきたのです。
天狗は羽うちわを手に、「太郎、どうだ? これで鼻が高くなったり低くなったりできるんだ」と自慢げに言いました。太郎は信じがたく思いながらも、天狗が実際に自分の鼻を扇いでみせると、なんとその効果で鼻が伸び上がってしまいました。慌てた太郎は、「元に戻してくれ!」と叫び、結局交換に応じることになりました。
こうして太郎は天狗の羽うちわを手に入れ、一方の天狗は喜びながらサイコロを持って空へと飛び去りました。翌日、太郎はある長者の一人娘に恋をし、羽うちわの力を試すため、家の前で声を上げました。「娘の鼻よ、どんどん伸びろ!」すると、娘の鼻はみるみると伸び始め、悲鳴を上げる娘。しかし太郎はうちわの向きを変え、今度は鼻が縮みすぎて顔の中へと消えてしまいました。再びうちわを表にして扇ぐと、娘の鼻はまた伸び、やがて医者たちも手に負えないほどに。長者は困り果て、「娘の鼻の病を治した者を婿にする」と告知。太郎は自信満々に家へ入り、羽うちわを構えて「娘の鼻よ、小さくなれ!」と唱えると、あっという間に元通りになり、太郎は見事長者の婿となりました。
祝宴の最中、酒に酔った太郎は横になり、嫁に団扇で風を送ってもらうよう頼みます。しかしその団扇こそ、天狗の羽団扇で、太郎の鼻はまたもや伸び始め、天井を突き破り、屋根をも打ち抜いて夜空へと一直線に昇っていきました。驚いた殿上人たちは、その伸びた鼻を杭代わりに打ちつけ、太郎は慌てふらつきながらも、嫁の「うちわを裏にしてあおげ!」という叫びに従い、ようやく鼻は縮み、体はふわりと浮かび上がってしまいました。結局、太郎は天の川の中へと吸い込まれてしまったのでした。
教訓:
好奇心と挑戦心は、新たな発見と成長の原動力。しかし、無謀な冒険や欲望に流されると、思いがけない結果を招くこともあるので、節度とバランスを保つことが重要です。
おわりに
「テングの羽うちわ」の物語は、笑いと驚きが交錯する中で、人間の知恵と天狗の力がどのように絡み合うのかを描いています。太郎の大胆な挑戦と、天狗との駆け引きは、現代の私たちにも新たな発想やユーモアのヒントを与えてくれるでしょう。日本昔話の魅力を再確認し、笑いと感動をぜひお楽しみください。
Wikipedia – 天狗
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